トイプードルのおねえさん、ローラは街のチョコレート屋さん。
毎朝、エプロンをきゅっとしめて、チョコをこねこね、まぜまぜ。
おみせの中には、あま〜い いいにおいが ふんわり広がります。
ある日、ローラは、まどのそとで しょんぼりしている子を見つけました。
「どうしたの?」とドアをあけると、クマのジェイソンくんが立っていました。
「おともだちとケンカしちゃったの……でも、ごめんねって、なんていえばいいか、わかんなくなっちゃって……」
ローラは そっとわらって、「ちょっと、まっててね」と言いました。
しばらくして、ローラはちいさなハートのチョコをジェイソンくんにわたしました。
そこには、ちいさく「ありがとう」とチョコペンでかいてあります。
「これを、わたしてみたらどうかしら?」
「でも、ぼく、『ありがとう』じゃなくて、『ごめんね』って言いたいんだよ……」
ローラは、ふわっとわらって言いました。
「『ごめんね』も、『ありがとう』も、だいじなきもち。どっちも、やさしいこころからうまれるのよ」
ジェイソンくんは、ちょっぴりふしぎそうな顔をしてから、うなずきました。
そして、チョコをもって、おともだちのところへかけていきました。
その日の夕方、ローラのおみせに、ジェイソンくんと おともだちがいっしょにあそびにきました。
「ローラさん、ありがとう!ぼく、ごめんねっていったあとに、『いっしょにあそんでくれてありがとう』っていったらね、おともだちもにっこりしてくれたの!」
「うれしかったから、こんどはふたりで『ありがとうチョコ』をつくりたいんだ!」
ローラは、やさしい目でふたりを見て、にこっと笑いました。
「じゃあ、特別レッスンのはじまりね。チョコレートにはね、ちゃんとこころがうつるのよ」
その日、ローラのおみせでは、ちいさな手とチョコが、いっしょうけんめいうごいていました。
できあがったチョコには、「ありがとう」「だいすき」「またあそぼうね」と、いろんな言葉がかいてありました。
ローラは、それをながめながら思いました。
「やさしい言葉は、あまいチョコよりも、ずっと心をあたためてくれるのよ」
そして、おみせのまどには、新しいかんばんがかかれました。
「こころにとどく、ことばチョコ つくります」
おしまい