「フェリシアさんと すてきな しゃしん」ーフェリシアさんはフォトグラファーー

シルバニアファミリー
Pocket

チャコールネコのフェリシアさんは、ひとりたびがだいすきな フォトグラファー。
きょうもカメラをかかえて、のんびり森をあるいていました。

「どこかに、すてきな一枚が かくれてないかしら?」

パシャ、パシャッ。
小さなおはな、ぴょんととびはねるカエル、おちばのなかをちょこちょこ動く小さな影……
いろんな“いま”を、たいせつに カメラにおさめていきます。

そのとき、ひとりのこどもが、道ばたで しくしく泣いていました。

「どうしたの?」
フェリシアさんがそっと声をかけると、
「まいごになっちゃったの……」と、ヒツジのエマちゃん。

エマちゃんは、ききゅうを見にきたけれど、おかあさんとはぐれてしまったのです。

「だいじょうぶよ。いっしょにさがしましょ」
フェリシアさんはエマちゃんの手をにぎり、森のなかをあるきだしました。

「エマちゃん、すきなものって なに?」
「シュークリームと、リンゴ……と、ききゅう!」

ふふっとフェリシアさんは笑いました。
「それなら、おかあさんもきっと、ききゅうのそばにいるかもね」

ふたりでおはなししながら、森をぬけて 小高い丘にでると――
そこには、あざやかな気球が ゆらゆらういていました。

「ママー!」
エマちゃんは走りだし、おかあさんのうでのなかにとびこみました。

ふたりは、きゅっと だきあって、とってもうれしそう。

フェリシアさんは、そっと近づいて言いました。
「ねえ、おふたりのうれしいところ、しゃしんにとってもいいかしら?」

エマちゃんとおかあさんは顔を見合わせて、にっこり。

「もちろん!」と、おかあさん。
「わたし、しゃしんだいすき!」と、エマちゃん。

パシャ。
フェリシアさんは、そのやさしい光景をカメラにおさめました。

「ありがとう、フェリシアさん」
エマちゃんはにこにこしながら、お礼をいいました。

「いえいえ。きみのえがおが、きょういちばんのしゃしんよ」
フェリシアさんも、やさしくほほえみました。

その日、フェリシアさんのカメラには
小さなまいごと、おおきなやさしさの いちまいがふえました。

それは、たいせつなたびの たからものになりました。

おしまい。

タイトルとURLをコピーしました