しずかな午後、街のはずれにある小さなカフェには、あたたかいコーヒーの香りがただよっています。
このカフェをひらいているのは、シマネコのおにいさん・ヴィクターです。

「いらっしゃい。きょうのおすすめは、かぼちゃのワッフルだよ」
お客さんとしてやってきたのは、ペルシャネコのおにいさん・フィン、ラブラドールのおにいさん・リアム、そしてダルメシアンのおにいさん・ジョン。
「かぼちゃのワッフル、いいですね。午後の読書にぴったりです」
フィンはめがねをくいっと持ち上げて、にっこり。
「ぼくは、そのワッフルにラベンダーの紅茶をあわせてみたいな」
リアムはにおいをかぐように、うっとり目をとじます。
「私は、熱いコーヒーをひとつ。そして、ワッフルは……そうですね、二枚いただこうかな」
ジョンはマフラーをはずしながら、にこやかにほほえみました。

ヴィクターはテーブルにカップをならべながら、やわらかく笑います。
「ふふ、いろいろな楽しみ方をしてくれるのが、ぼくはいちばんうれしいよ」
しばらくして、ワッフルとあたたかい飲みものが運ばれてくると、店の中はやさしい空気につつまれました。
「ねえ、ジョンさん、きょうの小説はすすんでる?」
リアムが聞くと、ジョンは少し首をかしげて、
「ええ、構想はあるのですが、なかなか言葉がうまく並んでくれなくてね」とこたえます。
「ぼくが手伝いましょうか? 話を聞きながら整理するの、得意なんです」
と、フィンがやさしくほほえみました。
「それなら、音楽を聴きながら考えてみたらどうかな。音って、気持ちをゆるめてくれるから」
リアムのやさしい声が、カフェにとけこんでいきます。

ヴィクターは、カウンターの中からみんなのようすを見て、うれしそうに目を細めました。
「このカフェ、コーヒーだけじゃなくて、アイデアややさしさも、あったかくなる場所だね」
みんながわらって、うなずきました。
外はすこし風がふいてきたけれど、カフェの中には、ことことゆれるポットの音と、ぽかぽかの心があふれていました。
おしまい。