「ステラさんの春のドレス」ーやさしいドレスー

シルバニアファミリー
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あるあさ、街のカフェには、やわらかいおひさまのひかりがさしこんでいました。
ショコラウサギのステラさんは、ドレスのスケッチをしながら、あたたかいミルクティーをのんでいます。

そのとき、カフェのドアがチリン♪とひらいて、ラブラドールのおにいさん・リアムさんがはいってきました。

「おはよう、ステラさん。あれ? テーブルの下に、ちいさなリボンが落ちてるよ。ステラさんのじゃない?」

リアムさんは、足もとに落ちていたちいさな白いリボンをそっとひろって、テーブルにおきました。

ステラさんは「あら!」と目をまるくして、そのリボンを見つめました。
「それ、さっきスケッチしてたドレスのサンプルに使ってたの。ありがとう、見つけてくれて」

リアムさんはにっこり笑って言いました。
「大事なパーツなんだね。なくならなくてよかった」

そのあと、バリスタのヴィクターさんがコーヒーをもってきました。
「はい、カフェラテ。あ、ステラさん、きょうもスケッチ中かい? 新しいドレスの?」

「ええ、こどもたちにぴったりの春のドレスを考えているの」

ヴィクターさんはカップをそっとテーブルにおきながら、言いました。
「それは楽しみだね。きっと、やわらかくて、やさしい色なんだろうな」

「ふふ、どうかしら。春の光みたいに、あたたかい気もちになれるように……って、思ってるの」

そのとき、となりの席にいた女の子が、そっと顔をのぞかせました。
「そのドレス、かわいい……」
おかあさんと一緒にカフェに来ていた女の子でした。

ステラさんはにっこりわらって、ゆっくり言いました。
「ありがとう。ドレスってね、きるひとが “うれしいな”って思えるように、そっと気もちをこめてつくるのよ」

女の子は目をまんまるにして、うれしそうにうなずきました。

リアムさんが静かに言いました。
「ステラさんのドレスには、そういう魔法があるね。やさしくて、ほっとする魔法」

ステラさんは、ほほをそっと赤らめながら、うれしそうに笑いました。
「ありがとう。ドレスがそんなふうに見えたら、それだけでしあわせ」

その日、カフェには、おひさまのようにあたたかな空気がながれていました。
ステラさんのスケッチにも、春の光のような色が、ふわりとさしこんだようでした。

おしまい。

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